
©︎Yuya Yamazaki
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ころころしている。形、形があるじゃない?円いとか四角いとかブヨブヨとか、何にでも。...ブヨブヨは人によるかな...うん...。目に見えなくっても、あるじゃない?丸く収まらないこととか、三角になりそうな関係。
ここ、尖ってる...ここには穴が空いている。―この形で、◼を出ようとおもう。今も昔も変わらないのは、ミの他に、カギと財布だけを持てばそこそこどうにかなるってことなんじゃないかな。この辺りのザラザラしたミは何かで隠して...こっちのブヤブヤしたミは邪魔だから途中捨てよう。水漏れもあるけれど、この形で◼を出ようとおもう。まだ帰ってきたときに安心したいから、電気を消す勇気はない。
鉄...下、下、下、下、下、下、下、下、下、下、下、下、下...左... 左、右...左右.........左、右、下...右斜め、真ん中、下、下、下、下・・・・右、真ん中、右、ゲート、右...左、上、上、上・・・・が中心 方面へ向かう列車までの順。ひとつ、またひとつ、トツ、トツ、トツ、トツ・・・・・・中心。中心の端で、24.7がウルトラライトダウンに埋もれて〈じゃあ、また〉を出している。羊毛に埋もれた長方形が同じように〈じゃあ、また〉のカードを出して交換をする。ウルトラライトダウンがオブラートを、羊毛のほうが金塊で出来たカードを回収してケースに入れる。...今、相場がいい。高く売れるだろう...これから後、価値は下がり続けるから売ることをお勧めする。...ああ!わざわざ勧めなっくても、金というだけでちゃんとすぐ売りに行くから。大丈夫。オブラートのほうはというとその後、雨の日にウルトラライトダウンの中で溶ける。それでおしまい。
あっちの右では〈じゃあ、また〉が切符になってゲートに吸い込まれていくところで、そっちの左では、Suicaになったヤツピッと鳴いている。たまに閉まっておどおどしても、舌打ちにかき消されるから吸い込まれたまま...そうやって、本当にちゃんとケースに収まる、なんていうことはなく溶ていったり、「他」に回収されていく。「〓」(わたし)は空いている 真ん中を選んだが、切符もSuicaも期限が切れていた。
フワフワしている......形、形があるじゃない?何にでも。...フワフワも人によるかな...うん......丸く収まらないものは丸くないし、〝なりそうなもの〟だから三角形でもない。
ここ、反ってる...ここには穴が、空いている。
ーここ、...ここのファイルを消去する。ゴミ箱を経由させず、Delete+( と)Shiftで完全に。戻すことはできない。...容量が、いっぱいなんです... あと73年は生きなきゃいけないから...うん...。あ、そうだ。火葬場も経由しないで、そのまま行くことはできないのかな?...どこに?(自問ではなくヒトへ向けての問い)...どこだろう。...ア、うん...消えてる、完全。
完全になったから手は置いて行く。今度はちゃんと、足で行こうとおもって。あー(明るいニュアンス)......。あそこやあそこ、達で聴こえている〈じゃあ、また〉が回収されることは、もう無い。
「私」は、私に渡されたカードを回収しに行く。...じゃあ!
電気を消す。
終
text by 山下 茜
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©️ Yuya Yamazaki
ハロー、バイバイ
ハローとバイバイを主軸に、音楽家・劇作家・振付家がそれぞれの解釈で表現したものを緩やかな線で繋ぐように演出した作品。
2020年 初演
カフェ・ムリウイ
出演:古茂田 梨乃・都田 かほ・植野 晴菜・横山 八枝子
テキスト:山下 茜
作曲:松本 真結子
演奏:松本 真結子・五十嵐 大和
衣装:古郡 稔
ビジュアルデザイン:大塚 郁実
写真:山﨑 優也
振付・演出・構成:横山 八枝子
special thanks!!
大橋可也&ダンサーズ/元鼓次郎/福士 瑞穂/柴崎 雄介/ MA FAMILLE/カフェムリウイの皆様
主催・企画:やえこカンパニー
鉄、砂、ガラス、水、声、それから...。 これらの「自然な音」同士が、偶然に出会うとともに別れていく。
この 二面性が、作品の中に深く強く染み込んでいくように、そっと「音 楽」を作りました。
作曲 松本 真結子
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認識すらしていない別れや、確実に訪れる本当を忘れてまた手放す人び とー そしてこの空間に有る身体と、音楽のことだけを考えて書きました。 近ごろ、どんな形であれ自分を豊かにするのは他人(「観客」とも言える かもしれません)だよなぁとおもいます。 機会を与えてくれたことに感謝しています。 本日はご来場くださり誠にありがとうございます。
テキスト 山下 茜
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本公演は、ハローとバイバイによって緩やかに繋がれた 物語と音楽と身体でできた作品です。
上演時間は約55分を予定しております。
この時間が一つの体験となること、 その体験があなたの身体のどこかで解釈されることを求めて、 そしてそれらは最も自由であり守られるべきものであると、 約束いたします。
最後に、この場にお立会いいただいたことに、出会いに、 心から感謝申し上げます。
振付 他 横山 八枝子
(『ハロー、バイバイ』当日パンフレットより)

